大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)740号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鍛治利一、同香山親雅の上告理由第一点について。

本件農地の売買契約において、当時施行の臨時農地価格統制令(昭和一六年勅令一〇九号)三条一項所定の最高価格を超える代金額の約定があつたという事実だけでは、契約自体が民法九〇条により無効となるものではなく、この場合、右売買契約は、統制価格を超過する代金額の部分だけが無効となるにとどまり、統制価格の範囲内では、なお契約は有効たるを失わないものと解すべきこと、当裁判所の判例の趣旨に照し明らかである(昭和二六年(オ)第五四二号、同二九年八月二四日第三小法廷判決参照)。よつて、これと同趣旨に出でた原判決は正であり、論旨は採用できない。

同第二点について。

しかし、被上告人が所論上告人の意思を知つていたことは原審において主張も立証もなく、民法九五条を適用すべき限りでないから、同条の適用を否定した原判決は正当たるを失わず、引用の判例は適切を欠き、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例